大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

東歌(17)・・・巻第14-3572

訓読 >>>

あど思(も)へか阿自久麻山(あじくまやま)の弓絃葉(ゆづるは)の含(ふふ)まる時に風吹かずかも

 

要旨 >>>

いったい何をぐずぐずしているのか、阿自久麻山のユズリハがまだ蕾(つぼみ)の時だからといって、風が吹かないなんてことがあるものか。

 

鑑賞 >>>

 「あど思へか」は何と思ってか。「あど」は「何と」の東語。「阿自久麻山」は所在未詳。「弓絃葉」はユズリハ。春、枝先に若葉が出て、初夏、その下に小花が咲きます。「含(ふふ)まる時」は、葉や花がまだ開き切らないでいる蕾(つぼみ)の時。「含(ふふ)む」は、もともと口の中に何かを入れる意で、その口がふくらんだ様子から蕾がふくらむ意に転じた語。ここでは、女が若く幼いことに譬えています。「風吹かずも」は、他の男が言い寄ることの譬え。ためらっている男に、他の男が言い寄るぞと、第三者がけしかけている歌です。