大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

あしひきの山橘の色に出でよ・・・巻第4-669

訓読 >>>

あしひきの山橘(やまたちばな)の色に出でよ語らひ継(つ)ぎて逢ふこともあらむ

 

要旨 >>>

山橘の紅い実のように、はっきりと気持ちを態度に出しなさい。そうすればやりとりを重ねていくうちに直接逢える機会もあるだろう。

 

鑑賞 >>>

 春日王(かすがのおおきみ)の歌。春日王は、志貴皇子の子、安貴王の父。ある女に王が贈った歌で、女は王に心を許してはいるものの、身分の隔たりがあったためか気持ちをなかなか表面に表さないため、それを改めよと言っています。

 「あしひきの」は「山」の枕詞。「山橘」は、ヤブコウジの古名。夏に白い小花を咲かせ、冬に赤い実をつける常緑低木。上2句は「色に出づ」を導く序詞。「語らひ継ぎて」は、人の噂が伝わって、あるいは、誰かが互いの消息を伝えて、などと解釈するものもあります。