大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

一日には千重しくしくに我が恋ふる・・・巻第10-2234

訓読 >>>

一日(ひとひ)には千重(ちへ)しくしくに我(あ)が恋ふる妹(いも)があたりに時雨(しぐれ)降る見ゆ

 

要旨 >>>

一日の間に、幾度も重ね重ね私が恋い焦がれるあの子の家のあたりに、時雨がしきりに降っている。

 

鑑賞 >>>

 『柿本人麻呂歌集』所収の「雨を詠む」歌。「一日には」は、一日のうちには。「千重」は、幾度もを強調した語。「しくしくに」は、しきりに、絶え間なく。この歌について窪田空穂は、「奔放であるとともに統一があって、技巧としても超凡なものである。人麿以外の者には詠めない歌で、若き日の人麿を思わせるに足りる歌である」と述べています。

 

柿本人麻呂歌集』について

 『万葉集』には題詞に人麻呂作とある歌が80余首あり、それ以外に『人麻呂歌集』から採ったという歌が360余首あります。『人麻呂歌集』は『万葉集』成立以前の和歌集で、人麻呂が2巻に編集したものとみられています。 
 ただし、それらの中には明らかな別人の作や伝承歌もあり、すべてが人麻呂の作というわけではないようです。題詞もなく作者名も記されていない歌がほとんどなので、それらのどれが人麻呂自身の歌でどれが違うかのかの区別ができないのです。