大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

宴席の歌(3)・・・巻第20-4302~4303

訓読 >>>

4302
山吹(やまぶき)は撫(な)でつつ生(お)ほさむありつつも君(きみ)来(き)ましつつ挿頭(かざ)したりけり

4303
我(わ)が背子(せこ)が宿(やど)の山吹(やまぶき)咲きてあらばやまず通はむいや年の端(は)に

 

要旨 >>>

〈4302〉この山吹は撫でながら大切に育てましょう。いつもこうしてわが君がいらっしゃって、髪飾りになさっておられるのだから。

〈4303〉あなたの庭の山吹がいつもこんなに美しく咲いているのなら、やまずに通って来ましょう、来る年も来る年も。

 

鑑賞 >>>

 天平勝宝5年(753年)3月19日、大伴家持の荘園の槻(けやき)の木の下で宴飲(うたげ)をした時の歌。4302は、置始連長谷(おきそめのむらじはつせ)の歌。長谷は荘園の番人ではないかとされます。4303は、長谷が花を折り取り、酒壺を提げてやって来たので、家持が作った歌。4303の「年の端」は、毎年。

 山吹(ヤマブキ)はバラ科の落葉低木で、山野でふつうに見られ、春の終わりごろにかけて黄金色に近い黄色の花をつけます。そのため「日本の春は梅に始まり、山吹で終わる」といわれることがあります。 万葉人は、 ヤマブキの花を、生命の泉のほとりに咲く永遠の命を象徴する花と見ていました。ヤマブキの花の色は黄泉の国の色ともされます。