訓読 >>>
4056
堀江(ほりえ)には玉(たま)敷(し)かましを大君(おほきみ)を御船(みふね)漕がむとかねて知りせば
4057
玉 敷(し)かず君が悔(く)いて言ふ堀江(ほりえ)には玉敷き満(み)てて継ぎて通(かよ)はむ〈或いは云ふ、玉 扱(こ)き敷きて〉
要旨 >>>
〈4056〉堀江に玉を敷き詰めておくのでした。わが大君がここで御船にお乗りになるとわかっていましたら。
〈4057〉玉を敷かないのをあなたが悔やむこの堀江には、私が隅まで玉を敷いて、何度も通い続けましょう。〈私が玉を散らして敷いて〉
鑑賞 >>>
左注に元正太上天皇(太上天皇は上皇のこと)が「御船で堀江をさかのぼって舟遊びをした日に、左大臣の橘諸兄が奏上した歌と御製」とあり、4056が橘諸兄の歌、4057が太上天皇の御製です。
「玉」は道を清らかにするために敷く小石。「堀江」は難波の堀江。今の天満橋あたりの大川とされます。諸兄の自身の不注意を謝する歌に対し、太上天皇はおおらかにお答えになっており、君臣の親和のさまがうかがわれる御製です。