訓読 >>>
こもりくの泊瀬(はつせ)の山に照る月は満ち欠けしけり人の常(つね)なき
要旨 >>>
あの泊瀬の山に照る月は、満ちたり欠けたりしている。人もまた不変ではない。
鑑賞 >>>
「こもりくの」は「泊瀬」の枕詞。「泊瀬の山」は奈良県桜井市初瀬の山。月は満ち欠けを繰り返すことから、死と再生、すなわち不老不死と結びつけられる一方で、常に形が変化するため、無常を示すものともされました。この歌は、当時、葬地だった泊瀬のイメージを重ねつつ、泊瀬山に照る月の満ち欠けに、人の世の無常を詠んでいます。