大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

弥彦おのれ神さび・・・巻第16-3883

訓読 >>>

弥彦(いやひこ)おのれ神(かむ)さび青雲(あをくも)のたなびく日すら小雨(こさめ)そほ降る  [一云 あなに神さび]

 

要旨 >>>

弥彦の山はおのずと神々しくて(ほんとうに神々しくて)、青雲のたなびくこんな晴れた日ですら、小雨がしとしとと降っている。

 

鑑賞 >>>

 越中(こしのみちなか)の国の歌。「越中」は富山県。「弥彦」は、新潟県西蒲原郡にある山で、以前は越中所属だったようです。「おのれ」は、自然に、おのずから。「神さび」は、神々しいさま。「青雲」は、青天に薄くたなびく灰色がかった雲。当時の「青」は黒と白の中間色を漠然と指していたらしく、緑、藍から灰色までをも含む色とされました。この「青雲」は雨雲ではなく、聖なる山には、晴れの日でも、天つ水すなわち天の呪力を宿す小雨が降ることを歌っています。

 一に云うの「あなに」は、ああ、ほんとうに。