大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

真木の上に降り置ける雪のしくしくも・・・巻第8-1659

訓読 >>>

真木(まき)の上(うへ)に降り置ける雪のしくしくも思ほゆるかもさ夜(よ)問(と)へ我(わ)が背(せ)

 

要旨 >>>

真木の上に降り積もる雪のように、絶え間なくあなたのことが思われてなりません。今夜いらして下さい。

 

鑑賞 >>>

 作者の他田広津娘子(おさたのひろつめのおとめ)は伝未詳ながら、大伴家持の愛人の一人ではないかともいわれます。「真木」は、檜や杉など良質の木材になる木。上2句は「しくしく」を導く序詞。「しくしく」は、しきりに、絶え間なく。

 白い雪が降り積もる、しんしんとした静寂のなか、「さ夜問へ我が背」という簡潔で柔らかな結句が、祈りのように響く印象的な恋の歌です。