大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

一重の衣を一人着て寝れ・・・巻第12-2853

訓読 >>>

真玉(またま)つく遠(をち)をし兼ねて思へこそ一重(ひとへ)の衣(ころも)ひとり着て寝(ぬ)れ

 

要旨 >>>

私たちの将来のことを考えるからこそ、一重の薄い着物にくるまって一人寂しく着て寝ているのです。

 

鑑賞 >>>

 「真玉つく」は真珠を付ける緒と続け、「遠(をち)」の「を」の枕詞。「遠」は、将来の意。女が男に贈った歌で、周囲の噂を憚り、男との交渉を絶って一人寝をしているのは、二人の関係の秘密を守って堅い関係を保とうとするためだと思いつつも、さすがに侘びしく感じています。更には、そうした女の心を誤解しないように、との気持ちも込められているようです。

 国文学者の窪田空穂は、女性らしい警戒心と思慮の現われている歌であり、「一重の衣を一人着て寝れ」は、巧みな具象であると評しています。