大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

玉梓の君が使ひの手折り来る・・・巻第10-2111

訓読 >>>

玉梓(たまづさ)の君が使ひの手折(たを)り来(け)るこの秋萩は見れど飽(あ)かぬかも

 

要旨 >>>

あなたの寄こしたお使いが手折ってきてくれたこの秋萩は、見ても見ても見飽きることがありません。

 

鑑賞 >>>

 「玉梓の」は、古く便りを伝える使者は、梓(あずさ)の枝を持ち、これに手紙を結びつけて運んでいたことから「使ひ」に掛かる枕詞。また、妹へやることから「妹」にも掛かります。使いの者が、途中で美しい萩を見かけ、手折って添えたもので、君の使いの持ってきた萩であるからこそ、特別に美しいと言っています。使いへの返事に書き添えた歌とみられます。

 夏から秋にかけて咲く赤紫色の萩の花は、古くから日本人に愛され、『万葉集』には141首もの萩を詠んだ歌が収められています。名前の由来は、毎年よく芽吹くことから「生え木」と呼ばれ、それが「ハギ」に変化したといわれます。