大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

この雪の消残る時に・・・巻第19-4226

訓読 >>>

この雪の消(け)残る時にいざ行かな山橘(やまたちばな)の実(み)の照るも見む

 

要旨 >>>

この雪が消え残っている間にさあ行こう。山橘の実が赤く照り輝いている様を見るために。

 

鑑賞 >>>

 大伴家持の歌です。「山橘」は常緑低木のヤブコウジ。夏に咲く花は目立ちませんが、冬になると真っ赤な実がなります。大雪が少なくなった残雪の頃にみんなして行って、山橘の赤い実を見ようというので、斎藤茂吉は「『いざ行かな』と促した語気に、皆と共に行こう、という気乗のしたことがあらわれているし、『実の照るも見む』は美しい句で、家持の感覚の鋭敏さを示すものである」と評しています。