大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

風交り雪は降りつつ・・・巻第10-1836~1838

訓読 >>>

1836
風(かぜ)交(まじ)り雪は降りつつしかすがに霞(かすみ)たなびき春さりにけり

1837
山の際(ま)に鴬(うぐひす)鳴きてうち靡(なび)く春と思へど雪降りしきぬ

1838
峰(を)の上(うへ)に降り置ける雪し風の共(むた)ここに散るらし春にはあれども

 

要旨 >>>

〈1836〉風に交じって雪は降り続いているけれど、あたり一面には霞がたなびいていて、春がやってきている。

〈1837〉山あいではウグイスが鳴いていて草木も靡く春だと思われるのに、まだ雪が降り続いている。

〈1838〉峰の上に降り積もっている雪が、吹き降ろす風とともにここまで飛び散って来るようだ。もうとっくに春になっているというのに。

 

鑑賞 >>>

 「雪を詠む」歌。1836の「しかすがに」は、しかしながら、そうはいうものの。「春さる」は、春になる。1837の「山の際」は、山と山の間。「うち靡く」は「春」の枕詞。1838は、左注に「筑波山にて作れる」とあり、「峰の上」は、筑波山の山頂。「風の共」は、風ととともに。「雪し~らし」の「し~らし」は、確信的な推定。