大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

相見ては面隠さるるものからに・・・巻第11-2554

訓読 >>>

相(あひ)見ては面(おも)隠さるるものからに継(つ)ぎて見まくの欲(ほ)しき君かも

 

要旨 >>>

顔を合わせると、恥ずかしくて顔を隠したくなるのですが、それなのに、すぐにまた見たいと思う、あなたなのです。

 

鑑賞 >>>

 結婚後間もない女の歌。「ものからに」は、そういうものと決まっているのに、決まって自然に。「継ぎて」は、引き続いて。「見まく」は「見むこと」で、名詞。

 作家の田辺聖子はこの歌について、「可憐な新妻の風情であるが、それにしても『万葉集』の歌いぶりは古今独歩のもの、こんなに率直で飾り気のない言葉を並べながら、その奥にわくわくする心はずみ、美しい羞恥が揺曳(ようえい)し、たいそうデリケートな、清らかなエロスとなって発散している」と評しています。