大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

東歌(22)・・・巻第14-3436~3437

訓読 >>>

3436
しらとほふ小新田山(をにひたやま)の守(も)る山のうら枯(が)れせなな常葉(とこは)にもがも

3437
陸奥(みちのく)の安達太良(あだたら)真弓(まゆみ)はじき置きて反(せ)らしめきなば弦(つら)はかめかも

 

要旨 >>>

〈3436〉新田山の山守に大切に守られている木々のように、梢が枯れることなく、ずっと青葉でいてほしい。

〈3437〉陸奥安達太良山の真弓の弦をはずして反らせたまにして来たら、もう二度と弦は張れません。

 

鑑賞 >>>

 3436は、上野の国の歌。「しらとほふ」は語義未詳ながら、「小新田山」の枕詞。「小新田山」の「小」は美称。「新田山」は、太田市北方の金山。「末枯れ」は、枝先が枯れること。男女いずれの歌か不明で、また夫婦間の相聞、あるいは親、子どもに対して言っているようにも受け取れます。

 3437は、陸奥の国(福島、宮城、岩手、秋田、青森の各県)の歌。「安達太良」は、福島県二本松市安達太良山。「真弓」は、マユミの木で作った弓。「はじき置きて」は、弓の用が済んでそのままにしておくこと。「弦はかめかも」は、弦を元の通り張ることができない。弓は、通常、使用しない時は弦をはずして弾力を弱らせないようにするものの、そのまま長く放置すると弓が曲がったままになり弦が張れなくなる、と言っています。男から甚だしく疎遠にされている女の訴えの歌です。