大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

含めりと言ひし梅が枝・・・巻第8-1436~1437

訓読 >>>

1436
含(ふふ)めりと言ひし梅が枝(え)今朝(けさ)降りし沫雪(あわゆき)にあひて咲きぬらむかも

1437
霞(かすみ)立つ春日(かすが)の里の梅の花山のあらしに散りこすなゆめ

 

要旨 >>>

〈1436〉蕾がふくらんでいると人が言っていた、その人の家の梅は、今朝降った沫雪に逢って咲いただろうか。

〈1437〉霞が立ち込めている春日の里の梅の花よ、山おろしの風に散ってしまわないでおくれ、決して。

 

鑑賞 >>>

 大伴村上(おおとものむらかみ)の梅の歌2首です。大伴村上は、天平勝宝6年(754年)頃に民部少丞(民部省の三等官、従六位相当)、宝亀2年(771年)に従五位下に進み、翌年阿波守となった人。『万葉集』には短歌4首があります。

 1436の「含めり」は、蕾んでいる。「沫雪」は、泡のようにやわらかく消えやすい雪。雪は本来は梅の開花を妨げるものですが、ここでは雪の白さと競うようにして梅も白い花を咲かせただろうかと言っています。1437の「霞立つ」は「春日」の枕詞。「山」は、春日山。「こす」は、希求の意の助動詞。「ゆめ」は、決して。