訓読 >>>
冬ごもり 春さり来れば 朝(あした)には 白露(しらつゆ)置き 夕(ゆうへ)には 霞たなびく 風の吹く 木末(こぬれ)が下(した)に うぐひす鳴くも
要旨 >>>
春がやって来ると、朝方には白露が置き、夕方には霞たなびく。風が吹く山の梢の陰でウグイスがしきりに鳴いている。
鑑賞 >>>
巻第13には、作者名の分からない長歌、および長歌と反歌の連作が収められています。この歌は、春到来を寿ぐ冒頭歌で、地名はありませんが、大和の歌と見られています。「冬ごもり」は「春」の枕詞。「春さり来れば」は、春がやって来ると。「風の吹く」の原文表記「汗瑞能振」は訓義が定まっておらず、他に「雨のふる」などさまざまに試みられています。「木末」は、梢。この時代、鶯を「春告げ鳥」と呼ぶことはありませんでしたが、まさにそれにふさわしい歌になっています。
『万葉集』に詠まれた鳥
1位 霍公鳥(ほととぎす) 155首
2位 雁(かり) 66首
3位 鶯(うぐいす) 51首
4位 鶴(つる:歌語としては「たづ」) 45首
5位 鴨(かも) 29首
6位 千鳥(ちどり) 22首
7位 鶏(にわとり)・庭つ鳥 16首
8位 鵜(う) 12首