大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

玉たすき懸けぬ時なく我が思へる・・・巻第13-3286~3287

訓読 >>>

3286
玉たすき 懸(か)けぬ時なく 我(あ)が思(おも)へる 君によりては 倭文幣(しつぬさ)を 手に取り持ちて 竹玉(たかたま)を しじに貫(ぬ)き垂(た)れ 天地(あめつち)の 神をそ我(あ)が祈(の)む いたもすべなみ

3287
天地(あめつち)の神を祈(いの)りて我(あ)が恋ふる君い必ず逢はずあらめやも

 

要旨 >>>

〈3286〉玉たすきを懸けるように、心に懸けぬ時なく私が思っているあなたのため、倭文織りの幣を手に捧げ持ち、竹玉を隙間なく貫き通し、天地の神々に私はお祈りをする。ただ恋しくてどうしようもなく辛いので。

〈3287〉天地の神々にお祈りしたのだから、恋しいあなたに逢えないことがあろうか、必ず逢えるだろう。

 

鑑賞 >>>

 夫と疎遠になっている妻が、お祈りをしている歌。3286の「玉たすき」は「懸け」の枕詞。「倭文」は、日本古来の織物の一つで、縞に織った布。「幣」は、神に祈る時に捧げるもの。ここでは木綿に代えての高貴な幣だとみられます。「しじに」は数多く、ぎっしり。「いたもすべなみ」は、どうしようもなく辛いので。3287の「君い必ず」の「い」は語勢を強める間投助詞。「やも」は反語。