大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

巻向の穴師の川ゆ・・・巻第7-1100

訓読 >>>

巻向(まきむく)の穴師(あなし)の川ゆ行く水の絶ゆることなくまたかへり見む

 

要旨 >>>

巻向の穴師を流れ行く水がとぎれないように、自分もこれきりでなく、また見に来よう。

 

鑑賞 >>>

 『柿本人麻呂歌集』から1首。「巻向」は、奈良県桜井市北部の地。「穴師川」は、巻向川の別名。「痛足川」「痛背川」と表記する例もあり、それぞれ「ああ、足が痛い」「ああ、背中が痛い」の意から来ているようです。この歌を人麻呂作とみて、このころに穴師川のほとりに新たに通い始めた妻がおり、その妻に宛てた歌ではないかとする見方があります。光景への感動だけでは飽き足らない感があるのに加え、上3句が「絶ゆることなく」に譬喩として序詞の形になって続いているため、「かへり見む」の主格が明らかでない、などの理由によります。また、その妻とは、人麻呂が巻第1-42で「妹」と詠んだ、宮中の女官だった女性ではないか、と。

 

 

 

※ 参考文献はこちらに記載しています。⇒『万葉集』について