大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

妹すらを人妻なりと聞けば悲しも・・・巻第12-3115~3116

訓読 >>>

3115
息の緒(を)に我(あ)が息づきし妹(いも)すらを人妻なりと聞けば悲しも
3116
我(わ)が故(ゆゑ)にいたくなわびそ後(のち)つひに逢はじと言ひしこともあらなくに

 

要旨 >>>

〈3115〉命のかぎり恋い焦がれて苦しく溜め息ついていたあなたなのに、人妻であったと聞くと、たまらなく悲しい。

〈3116〉私のためにそんなに嘆かないでください。これからずっと逢わないつもりだと言った覚えはありませんのに。

 

鑑賞 >>>

 問答歌。3115は男の歌で、3116はそれに返した女の歌。3115の「息の緒に」は、命のかぎりに、命懸けで。「息づく」は、苦しそうにため息をつく。3116の「なわびそ」の「な~そ」は、禁止。「こともあらなくに」は、そのように言ったことなどありませんのに。女はそれまで人妻ということはいわず、男の求婚に対して生返事ばかりしていたのでしょう。人妻と分かってもなお、この男に気をもたせています。