大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

石橋の間近き君に・・・巻第4-596~598

訓読 >>>

596
八百日(やほか)行く浜の真砂(まなご)も我(あ)が恋にあにまさらじか沖つ島守(しまもり)
597
うつせみの人目(ひとめ)を繁(しげ)み石橋(いしばし)の間近き君に恋ひわたるかも

598
恋にもぞ人は死にする水無瀬川(みなせがは)下(した)ゆ我(わ)れ痩(や)す月に日に異(け)に

 

要旨 >>>

〈596〉八百日もかかって行くほどの長い浜辺の砂の数だって、私の恋心にまさることがありましょうか、どうでしょう、沖の島守さん。

〈597〉現実の人の目がうるさいので、飛び石を渡って逢いに行けるほど間近にいますのに、あなたに逢えずにただ恋い慕っています。

〈598〉恋によってでも人は死にます。水無瀬川の水のように忍ぶ恋の思いから、私は日に日に痩せていきます。

 

要旨 >>>

 笠郎女(かさのいらつめ)が大伴家持に贈った歌。596の「八百日」は、甚だ多い日数を示す表現。「あにまさらじか」は、決して勝らないだろう。「島守」は、島の番人。597の「うつせみの」は「人」の枕詞。「人目を繁み」は、人目が多いので。「石橋」は、川の浅瀬に飛び石を置いて橋としたもの。「石橋の」は「間近き」の枕詞。598の「水無瀬川」は、ごろごろとある石の下に水が流れていて、水のないように見える川のことで、「下(目に見えない所)」の枕詞。