大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

天の原雲なき夕に・・・巻第9-1712

訓読 >>>

天(あま)の原(はら)雲なき夕(よい)にぬばたまの夜(よ)渡る月の入(い)らまく惜(を)しも

 

要旨 >>>

見渡すかぎり雲のないこの夕暮れに、夜空を渡り月が沈んでいくのは残念だ。

 

鑑賞 >>>

 「筑波山に登りて月を詠める」歌。「ぬばたまの」は「夜」の枕詞。「夜渡る」は、夜空を過ぎていく。「入らまく」は「入らむ」の名詞形。この歌について窪田空穂は、「大景を単純に捉えて、充実したものとしている。・・・感動の足りない憾(うら)みはあるが、安らかに詠んで大景をこれほどに支配し得ている手腕は、非凡というべきである」と評しています。

 

 

万葉集』に多く詠まれた山

筑波山常陸国 22首
春日山大和国 18首
三笠山大和国 16首
奈良山大和国 14首
妹背山紀伊国 14首
竜田山(大和・河内国境) 13首
香具山大和国 11首
富士山駿河甲斐国境) 11首
泊瀬の山大和国 10首
二上山(大和・河内国境) 10首
神奈備大和国 9首
真土山(大和・紀伊国境) 7首
逢坂山(山城・近江国境) 7首
佐保の山大和国 6首
吉野山大和国  6首
三船の山大和国 6首
高円山大和国  5首
三輪山大和国  5首
生駒山(大和・河内国境) 5首
立山越中国  5首
布留山大和国 4首
鹿背山山城国 4首
大野山筑前国 4首

※ 参考文献はこちらに記載しています。⇒『万葉集』について