大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

月しあれば明くらむ別も知らずして・・・巻第11-2664~2666

訓読 >>>

2664
夕月夜(ゆふづくよ)暁闇(あかときやみ)の朝影(あさかげ)に我(わ)が身はなりぬ汝(な)を思ひかねに

2665
月しあれば明(あ)くらむ別(わき)も知らずして寝(ね)て我(わ)が来(こ)しを人見けむかも

2666
妹(いも)が目の見まく欲しけく夕闇(ゆふやみ)の木(こ)の葉(は)隠(ごも)れる月待つごとし

 

要旨 >>>

〈2664〉暁の闇が明けてきて、朝日に映る影法師のように私は痩せてきた。あなたへの思いに堪えかねて。

〈2665〉月が出ていたので、夜が明けたことも知らず、寝すごして帰ってきたのを、誰かに見られただろうか。

〈2666〉あの子にひと目逢いたいと思う気持は、夕闇の木の葉に隠れている月を待っているようなものだ。

 

鑑賞 >>>

 「寄物陳思(物に寄せて思いを述べた歌)」で、月に寄せての歌。2664の「夕月夜」は、夕方の月は夜中には沈んでしまうことから、「暁闇」の枕詞。「朝影」は、朝の影法師。2665の「別」は、区別。「寝て我が来しを」は、寝過ごして私が帰ったのを。窪田空穂は、「不安をいったものではあるが、明るく楽しげな歌である」と言っています。2666の「見まく」は「見む」の名詞形。「欲しけく」は、形容詞「欲しけ」に「く」を接して名詞形にしたもの。

 

 

『万葉集』掲載歌の索引

【為ご参考】万葉仮名