大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

朝戸出の君が足結を・・・巻第11-2357

訓読 >>>

朝戸出(あさとで)の君が足結(あゆひ)を濡らす露原(つゆはら) 早く起き出でつつ我(わ)れも裳裾(もすそ)濡らさな

 

要旨 >>>

朝、戸を出てお帰りになるあなたの足許を濡らす露の原。私も早起きして、あなたに連れ添って出て、裳裾を濡らしましょう。

 

鑑賞 >>>

 『柿本人麻呂歌集』から旋頭歌1首。「足結」は、袴の膝下のあたりをくくる紐のこと。古代では、男が女の家を訪ねて行って、翌朝に出て行く「妻問い婚」が一般的で、その多くは周囲には秘密の関係でした。別れの朝、一夜を共にした女性が見送ります。しかし、戸口までだったら誰にも気づかれないけれど、一緒に外に出てしまうと、皆が気づいてしまう。街は噂でもちきりになって、二人の仲が引き裂かれることさえある。でも、やっぱり少しでも長く一緒にいたい。そこで、早起きをして途中まで見送り、一緒に露で裾を濡らしましょう、と言っています。

 

旋頭歌

 旋頭歌は、奈良時代における和歌の形式の一つで、『古事記』『日本書紀』『万葉集』などに作品が見られます。 5・7・7の同じ句形を2回繰り返した計6句からなり、上3句と下3句とで詠み手の立場が異なる場合が多くあります。頭句を再び旋らすことから、「旋頭歌」と呼ばれます。5・7・7の片歌を2人で唱和または問答したことから発生したと考えられています。