訓読 >>>
ほととぎす鳴きしすなはち君が家(いへ)に行けと追ひしは至(いた)りけむかも
要旨 >>>
ホトトギスが鳴いたので、すぐにあなたのお家まで行けと追いやりましたが、命じたとおりにそちらに到着したでしょうか。
鑑賞 >>>
大神女郎(おおみわのいらつめ:伝未詳)が大伴家持に贈った歌。「すなはち」のは原文は「登時」で、「そのとき」と訓むものもあります。ただちに、すぐに、の意。「かも」は、疑問。一見、軽く戯れているかのような歌ですが、ホトトギスを恋の使いに見立て、家持が疎遠になっているのを恨んだ歌と見られます。窪田空穂はこの歌を評し、「才走った歌で、『至りけむかも』は利いた句である」と述べています。
なお、『万葉集』では、家持がプレイボーイであり、十指に余る美女たちにちやほやされ、ずいぶんともてたことが強調されます。これは、家持の歌の絶対量の多さから、必然的に彼の女性関係が際立つというだけで、当時の貴族の男子は、その数の多少はあるにせよ、誰しもこのようなものだったかもしれません。
家持の恋人たち
青春期の家持に相聞歌を贈った、または贈られた女性は次のようになります。
大伴坂上大嬢
・・・巻第4-581~584、727~755、765~768ほか
笠郎女(笠女郎とも)
・・・巻第3-395~397、巻第4-587~610ほか
山口女王
・・・巻第4-613~617、巻第8-1617
大神女郎
・・・巻第4-618、巻第8-1505
中臣女郎
・・・巻第4-675~679
娘子
・・・巻第4-691~692
河内百枝娘子
・・・巻第4-701~702
巫部麻蘇娘子
・・・巻第4-703~704
日置長枝娘子
・・・巻第8-1564
妾
・・・巻第4-462、464~474
娘子
・・・巻第4-700
童女
・・・巻第4-705~706
粟田女娘子
・・・巻第4-707~708
娘子
・・・巻第4-714~720
紀女郎
・・・巻第4-762~764、769、775~781ほか
娘子
・・・巻第4-783
安倍女郎
・・・巻第8-1631
平群女郎
・・・巻第17-3931~3942