大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

この小川霧ぞ結べる・・・巻第7-1113

訓読 >>>

この小川(をがは)霧(きり)ぞ結べるたぎちゆく走井(はしりゐ)の上に言挙(ことあ)げせねど

 

要旨 >>>

この小川に白い霧が立ち込めている。たぎり落ちる湧き水のところで、言挙げなどしていないのに。

 

鑑賞 >>>

 「河を詠む」歌。「走井」は、勢いよく湧き出る泉。「言挙げ」は、言葉に出して言うこと。言挙げをすれば霧が立つという信仰を踏まえた歌とみられ、また、この歌から「井」が言挙げ、すなわち誓いの言葉を言う場であったことが窺えます。『古事記』『神代記』にも、天(あま)の真名井(まない)で天照大御神(あまてらすおおみかみ)と須佐之男命(すさのおのみこと)が誓約を行ったという記事があります。この歌は「井」を否定的に取り上げており、恋の不成就を歌ったものとみえます。