大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

遣新羅使人の歌(22)-3676~3680

訓読 >>>

3676
天(あま)飛ぶや雁(かり)を使(つかひ)に得(え)てしかも奈良の都に言(こと)告(つ)げ遣(や)らむ

3677
秋の野をにほはす萩(はぎ)は咲けれども見る験(しるし)なし旅にしあれば

3678
妹(いも)を思(おも)ひ寐(い)の寝(ね)らえぬに秋の野にさを鹿(しか)鳴きつ妻思ひかねて

3679
大船(おほぶね)に真楫(まかぢ)しじ貫(ぬ)き時待つと我(わ)れは思へど月ぞ経(へ)にける

3680
夜(よ)を長み寐(い)の寝(ね)らえぬにあしひきの山彦(やまびこ)響(とよ)めさを鹿鳴くも

 

要旨 >>>

〈3676〉空を飛ぶ雁を使いとして手に入れたいものだ。奈良の都に言伝てを託すことができるのに。

〈3677〉秋の野を美しく彩る萩が一面に咲いているけれど、見る張り合いもない。旅先の身なので。

〈3678〉妻のことを思って寝るに寝られずにいると、秋の野で牡鹿が鳴き立てている。妻恋しさに耐えかねて。

〈3679〉大船にたくさんの櫂を取り付け、いつでも出発できると思っていたのに、いつのまにか月が替わってしまった。

〈3680〉夜が長いので寝るに寝られないでいると、山を響かせて妻を呼ぶ牡鹿が鳴き立てている。

 

鑑賞 >>>

 引津に停泊した時の歌。「引津」は、福岡県糸島市の引津。3676の「天飛ぶや」は「雁」の枕詞。「得てしかも」の「てしか」は、願望。「言告げ」は、消息を伝える意。3677の「にほはす」は、美しい色に染める。「験なし」は、甲斐がない、張り合いがない。3678の「寐の寝らえぬ」は、寝ても眠ることができない。3679の「真楫しじ貫き」は、船の両舷に楫をたくさん取り付けて。「楫」は、舟を漕ぐための道具の総称。3680の「夜を長み」は、夜が長いので。「あしひきの」は「山」の枕詞。