大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

外のみに見つつ恋ひなむ・・・巻第10-1993

訓読 >>>

外(よそ)のみに見つつ恋ひなむ紅(くれなゐ)の末摘花(すゑつむはな)の色に出(い)でずとも

 

要旨 >>>

せめて遠目にだけでも姿を見て慕っていよう。鮮やかな紅花のように、はっきりと思いを打ち明けなくても。

 

鑑賞 >>>

 「花に寄せる」歌。「外のみに」は、せめて遠目にだけでも。「末摘花」は、紅花(べにばな)の別名で、先の方に咲く花を摘んで強い赤色を製するところからそう呼ばれます。「色に出でずとも」の「色に出づ」は、表面にあらわす意で、恋を打明けていわずとも。

 

 

 

万葉集』の三大部立て

雑歌(ぞうか)
 公的な歌。宮廷の儀式や行幸、宴会などの公の場で詠まれた歌。相聞歌、挽歌以外の歌の総称でもある。

相聞歌(そうもんか)
 男女の恋愛を中心とした私的な歌で、万葉集の歌の中でもっとも多い。男女間以外に、友人、肉親、兄弟姉妹、親族間の歌もある。

挽歌(ばんか)
 死を悼む歌や死者を追慕する歌など、人の死にかかわる歌。挽歌はもともと中国の葬送時に、棺を挽く者が者が謡った歌のこと。

万葉集』に収められている約4500首の歌の内訳は、雑歌が2532首、相聞歌が1750首、挽歌が218首となっています。

『万葉集』掲載歌の索引