大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

防人の歌(37)・・・巻第20-4421

訓読 >>>

我が行きの息づくしかば足柄(あしがら)の峰(みね)延(は)ほ雲を見とと偲(しの)はね

 

要旨 >>>

おれが旅に出て嘆かわしくなったら、足柄山の峰を這う雲を見ながら、このおれを偲んでおくれ。

 

鑑賞 >>>

 武蔵の国の防人、都筑郡(つつくのこおり)の上丁、服部於由(はとりべのおゆ)の歌。「行き」は旅。「息づくし」は「息づかし」の方言で、嘆かわしの意。「足柄の峰」は、神奈川県と静岡県の境にある足柄山。この時代、東国から西の方に行くには、東山道なら碓氷の坂(碓氷峠)、東海道なら足柄の坂(足柄峠)のいずれかを越えて行かねばなりませんでした。箱根路が開かれるのは後の時代のことです。「延ほ」は「延ふ」の方言。「見とと」は「見つつ」の方言。

 

東海道東山道旧国名

東海道
 伊賀(三重)
 伊勢(三重)
 志摩(三重)
 尾張(愛知)
 三河(愛知)
 遠江(静岡)
 駿河(静岡)
 伊豆(静岡・東京)
 甲斐(山梨)
 相模(神奈川)
 武蔵(埼玉・東京・神奈川)
 安房(千葉)
 上総(千葉)
 下総(千葉・茨城・埼玉・東京)
 常陸(茨城)

東山道
 近江(滋賀)
 美濃(岐阜)
 飛騨(岐阜)
 信濃(長野)
 上野(群馬)
 下野(栃木)
 岩代(福島)
 磐城(福島・宮城)
 陸前(宮城・岩手)
 陸中(岩手)
 羽前(山形)
 羽後(秋田・山形)
 陸奥(青森・秋田・岩手)