大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

高松のこの峰も狭に・・・巻第10-2233

訓読 >>>

高松(たかまつ)のこの峰(みね)も狭(せ)に笠立てて満ち盛(さか)りたる秋の香(か)のよさ

 

要旨 >>>

高松のこの峯も狭いほどに、笠を立てて、辺り一面に満ち溢れている秋の香りのよさよ。

 

鑑賞 >>>

 松茸などのキノコの香りを称えた歌。「笠」は、キノコの笠のこと。「高松」は地名で、奈良の高円(たかまど)山をタカマツと発音することもあったのではないかとする説もありますが、不明です。「峰も狭に」は、峰も狭いばかりに。ここでのキノコは松茸とされ、かつての松茸山は採り切れないほどの松茸が群生していたといいます。キノコを詠んだ歌は珍しく、『万葉集』中この1首のみです。さらには香りを詠んでいる点も珍しいことです。

 『万葉集』には、なぜか香りを詠んだ歌は少なく、梅の花についても、平安時代にはさかんにその香りが詠まれているのに比べて、あまり話題になっていません。香りが詠まれている例は、橘が多く、梅の花はその次、キノコはここの1首のみです。女性の美しさを「香ぐはし」といった例もあります。平安時代に香りが多く詠まれるようになったのは、宮廷での薫物(たきもの)の流行と連動するようです。

 

 

枕詞の用例数

  • あしひきの  108
  • ぬばたまの    80
  • しろたへの    61
  • ひさかたの    50
  • くさまくら    49
  • たまほこの    37
  • あらたまの    34
  • しきたへの    34
  • あをによし    27
  • まそかがみ    27
  • やすみしし    27
  • たらちねの    24
  • あまざかる    23
  • うつせみの    23
  • おほふねの    21
  • あづさゆみ    20
  • ももしきの    20
  • こもりくの    19
  • たまきはる    19
  • たまのをの    18
  • もののふの    18
  • たまくしげ    16
  • たまだすき    16
  • たまづさの    15
  • うちなびく    14
  • わかくさの    14
  • うちひさす    13
  • ちはやぶる    13
  • あまくもの    12
  • いさなとり    12
  • あかねさす    11
  • たまかぎる    11