大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

防人の歌(41)・・・巻第20-4356

訓読 >>>

我(わ)が母の袖(そで)もち撫(な)でて我(わ)がからに泣きし心を忘らえぬかも

 

要旨 >>>

私の母が、袖で頭を撫でてくれながら、私のために泣いてくれた。その気持ちは忘れようにも忘れられない。

 

鑑賞 >>>

 上総国の防人、山辺郡(やまのへのこおり)の上丁、物部乎刀良(もののべのおとら)の歌。「我がからに」は、私のことゆえに。「かも」は、詠嘆。ここでも4346の歌と同じように「頭を撫でる」行為がうたわれています。旅の無事を祈り、祝の言葉に伴わせる一つの呪法であったようです。ただ、「我が母の袖もち」は、母が私の袖を撫でて、とする解釈もあります。

 

巻第20「防人歌」の構成

 兵部少輔の大伴家持に上進された防人たちの歌は、全部で166首ありましたが、「拙劣歌は取り載せず」として82首が省かれました。巻第20の防人歌の構成と国別内訳は下記のとおりです。

遠江国の防人の歌
 4321~4327・・・進上18首のうち7首

相模国の防人の歌
 4328~4330・・・進上8首のうち3首

大伴家持の歌
 4331~4336

駿河国の防人の歌
 4337~4346・・・進上20首のうち10首

上総国の防人の歌
 4347~4359・・・進上19首のうち13首

常陸国の防人の歌
 4363~4372・・・進上17首のうち10首

下野国の防人の歌
 4373~4383・・・進上18首のうち11首

下総国の防人の歌
 4384~4394・・・進上22首のうち11首

大伴家持の歌
 4398~4400

信濃国の防人の歌
 4401~4403・・・進上12首のうち3首

上野国の防人の歌
 4404~4407・・・進上12首のうち4首

大伴家持の歌
 4408~4412

武蔵国の防人の歌
 4413~4424・・・進上20首のうち12首

昔年の防人の歌
 4425~4432

昔年に交替した防人の歌
 4436