訓読 >>>
我(わ)が母の袖(そで)もち撫(な)でて我(わ)がからに泣きし心を忘らえぬかも
要旨 >>>
私の母が、袖で頭を撫でてくれながら、私のために泣いてくれた。その気持ちは忘れようにも忘れられない。
鑑賞 >>>
上総国の防人、山辺郡(やまのへのこおり)の上丁、物部乎刀良(もののべのおとら)の歌。「我がからに」は、私のことゆえに。「かも」は、詠嘆。ここでも4346の歌と同じように「頭を撫でる」行為がうたわれています。旅の無事を祈り、祝の言葉に伴わせる一つの呪法であったようです。ただ、「我が母の袖もち」は、母が私の袖を撫でて、とする解釈もあります。
巻第20「防人歌」の構成
兵部少輔の大伴家持に上進された防人たちの歌は、全部で166首ありましたが、「拙劣歌は取り載せず」として82首が省かれました。巻第20の防人歌の構成と国別内訳は下記のとおりです。
遠江国の防人の歌
4321~4327・・・進上18首のうち7首
相模国の防人の歌
4328~4330・・・進上8首のうち3首
大伴家持の歌
4331~4336
駿河国の防人の歌
4337~4346・・・進上20首のうち10首
上総国の防人の歌
4347~4359・・・進上19首のうち13首
常陸国の防人の歌
4363~4372・・・進上17首のうち10首
下野国の防人の歌
4373~4383・・・進上18首のうち11首
下総国の防人の歌
4384~4394・・・進上22首のうち11首
大伴家持の歌
4398~4400
信濃国の防人の歌
4401~4403・・・進上12首のうち3首
上野国の防人の歌
4404~4407・・・進上12首のうち4首
大伴家持の歌
4408~4412
武蔵国の防人の歌
4413~4424・・・進上20首のうち12首
昔年の防人の歌
4425~4432
昔年に交替した防人の歌
4436