大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

御幣取り三輪の祝が・・・巻第7-1403

訓読 >>>

御幣(みぬさ)取り三輪(みわ)の祝(はふり)が斎(いは)ふ杉原 薪(たきぎ)伐(こ)りほとほとしくに手斧(てをの)取らえぬ

 

要旨 >>>

御幣を手にとって、三輪の神職が大切に守っている杉原よ。その杉原で薪を伐って、あやうく手斧を取られてしまうところだった。

 

鑑賞 >>>

 旋頭歌形式(5・7・7・5・7・7)の歌。「御幣」の「幣」は幣帛で、神に捧げる布。古くは麻や楮を用いました。「三輪」は、ここでは三輪山の麓の大神神社(おおみわじんじゃ)。「祝」は、神職の人。「ほとほとしく」は、危うく~しそう。大神神社には本殿がなく、拝殿奥の三輪山そのものを神としています。誰も足を踏み入れることができないにもかかわらず、その山に勝手に入り、神木を伐って叱られたという歌ですが、親に大切にされている娘を手に入れようとして、痛い目にあった男の歌とも取れます。

 大神神社大物主神(おおものぬしのみこと)を祀る日本最古の神社の一つで、酒の神様としても有名です。崇神天皇の命でつくった酒を、無病息災を願って三輪山に捧げたという伝説がもとになっています。御神木の「しるしの杉」にあやかって杉の枝を吊るし、新酒の成功を祈願した風習が、現在も杉玉として、各地で見られます。また、酒は須恵器という高温で焼き上げた硬質で丈夫な瓶に入れて保存したため、三輪山からは、祭祀用の須恵器が多く出土しています。