訓読 >>>
2506
言霊(ことだま)の八十(やそ)の街(ちまた)に夕占(ゆふけ)問ふ占(うら)まさに告(の)る妹(いも)は相(あひ)寄らむ
2507
玉桙(たまほこ)の道行き占(うら)に占(うら)なへば妹(いも)は逢はむと我(わ)れに告(の)りつも
要旨 >>>
〈2506〉言霊が宿る四つ辻に、夕方出向いて恋占いをやってみたら、お告げがはっきりと出た。お前の思う子はきっとお前になびいてくれる、と。
〈2507〉道を行きながら恋占いをしてみたら、あの人はきっとお前に逢うだろうとのお告げが出たよ。
鑑賞 >>>
『柿本人麻呂歌集』から、「寄物陳思(物に寄せて思いを述べた歌)」。2506の「言霊」は、言葉に宿っている力。「夕占」は、辻占(つじうら)または道占(みちうら)ともいい、夕方、道端に立って、一定の範囲の場所を定め、米をまいて呪文を唱えるなどして、その場所を通る通行人のことばを聞いて吉凶禍福を占ったといいます。辻は、人だけでなく神も通る場所であると考えられ、偶然そこを通った人々の言葉を神の託宣と考えたようです。また、 時代が下った江戸時代には「辻占売り」というものが現れて、吉凶の文句などを書いた紙片を、道行く人に呼びかけて売るようになったといいます。2507の「玉桙の」は「道」の枕詞。「道行き占」は、2506の「夕占」と同じ。2506・2507は連作とされ、2506は、占いの現われた瞬間の心、2507は、逢えないのではという不安を抱きながら女の家に向かっている時の心をうたっています。
「占」の語源は裏表(うらおもて)の「裏」で、裏に隠れている神意を表に現わすことを占(うら)と呼んだものです。また「告(の)る」の原意は、呪力ある言葉を発することであることから、占いの判断を「告る」と表現しています。祭祀で唱えられる「祝詞(のりと)」の語源も「のり+と」で、「のり」は「告り」、「と」は呪術的行為を示す接尾語とされます。
『万葉集』クイズ
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【解答】
1.雄略天皇 2.大伴家持 3.大伴坂上郎女 4.萩 5.第5巻 6.山上憶良 7.ホトトギス 8.大伴坂上大嬢 9.大伴書持 10.高橋虫麻呂
※ 参考文献はこちらに記載しています。⇒『万葉集』について