訓読 >>>
妹(いも)らがり我(わ)が通ひ道(ぢ)の細竹薄(しのすすき)我(わ)れし通はば靡(なび)け細竹原(しのはら)
要旨 >>>
妻のもとへと私が通う道に生い茂っている細竹の群れは、せめて私が通るときには靡いて平らかになれ、細竹の原よ。
鑑賞 >>>
「草を詠む」歌。「妹らがり」の「ら」は、親しみを表す接尾語。「がり」は「が在り」の約で、いる所。「細竹薄」は、小竹の群生。「我れし」の「し」は、強意の助詞。「靡け」は、平らかになれ。細竹原は、その葉で脚などが切れるような危険な道なき道であるため、細竹薄に靡けと言っています。
『古事記』景行天皇条の、ヤマトタケルの死後、その魂が白鳥となって飛んで行くのを追いかける后や子たちが「その小竹(しの)の苅り杭に、足切り破れども、その痛きを忘れて、哭きて追はしき」という場面に細小竹が見られます。そのときの謡は、「浅小竹原(あさじのはら) 腰なづむ 空は行かず 足よ行くな」で、やはり細竹原が行き悩む所だったことがうたわれています。
枕詞の用例数
- あしひきの 108
- ぬばたまの 80
- しろたへの 61
- ひさかたの 50
- くさまくら 49
- たまほこの 37
- あらたまの 34
- しきたへの 34
- あをによし 27
- まそかがみ 27
- やすみしし 27
- たらちねの 24
- あまざかる 23
- うつせみの 23
- おほふねの 21
- あづさゆみ 20
- ももしきの 20
- こもりくの 19
- たまきはる 19
- たまのをの 18
- もののふの 18
- たまくしげ 16
- たまだすき 16
- たまづさの 15
- うちなびく 14
- わかくさの 14
- うちひさす 13
- ちはやぶる 13
- あまくもの 12
- いさなとり 12
- あかねさす 11
- たまかぎる 11
※ 参考文献はこちらに記載しています。⇒『万葉集』について