大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

我れし通はば靡け細竹原・・・巻第7-1121

訓読 >>>

妹(いも)らがり我(わ)が通ひ道(ぢ)の細竹薄(しのすすき)我(わ)れし通はば靡(なび)け細竹原(しのはら)

 

要旨 >>>

妻のもとへと私が通う道に生い茂っている細竹の群れは、せめて私が通るときには靡いて平らかになれ、細竹の原よ。

 

鑑賞 >>>

 「草を詠む」歌。「妹らがり」の「ら」は、親しみを表す接尾語。「がり」は「が在り」の約で、いる所。「細竹薄」は、小竹の群生。「我れし」の「し」は、強意の助詞。「靡け」は、平らかになれ。細竹原は、その葉で脚などが切れるような危険な道なき道であるため、細竹薄に靡けと言っています。

 『古事記景行天皇条の、ヤマトタケルの死後、その魂が白鳥となって飛んで行くのを追いかける后や子たちが「その小竹(しの)の苅り杭に、足切り破れども、その痛きを忘れて、哭きて追はしき」という場面に細小竹が見られます。そのときの謡は、「浅小竹原(あさじのはら) 腰なづむ 空は行かず 足よ行くな」で、やはり細竹原が行き悩む所だったことがうたわれています。

 

 

 

枕詞の用例数

  • あしひきの  108
  • ぬばたまの    80
  • しろたへの    61
  • ひさかたの    50
  • くさまくら    49
  • たまほこの    37
  • あらたまの    34
  • しきたへの    34
  • あをによし    27
  • まそかがみ    27
  • やすみしし    27
  • たらちねの    24
  • あまざかる    23
  • うつせみの    23
  • おほふねの    21
  • あづさゆみ    20
  • ももしきの    20
  • こもりくの    19
  • たまきはる    19
  • たまのをの    18
  • もののふの    18
  • たまくしげ    16
  • たまだすき    16
  • たまづさの    15
  • うちなびく    14
  • わかくさの    14
  • うちひさす    13
  • ちはやぶる    13
  • あまくもの    12
  • いさなとり    12
  • あかねさす    11
  • たまかぎる    11

※ 参考文献はこちらに記載しています。⇒『万葉集』について