大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

つばらつばらに我家し思ほゆ・・・巻第18-4065

訓読 >>>

朝開(あさびら)き入江漕ぐなる楫(かぢ)の音(おと)のつばらつばらに我家(わぎへ)し思ほゆ

 

要旨 >>>

朝一番に船出をして入江を漕いで行く櫓の音がしきりに聞こえるように、しみじみ故郷の家が偲ばれる。

 

鑑賞 >>>

 越中国射水(いみず)郡の駅の館の柱に書きつけられていたという歌。作者については、左注に、「山上臣(やまのうえのおみ)が作った。名はわからない。また、憶良大夫(山上憶良のこと)の子息であるともいう。ただし、その実名はまだわからない」旨の記載があります。射水郡の駅は、今の富山県射水市にあった駅で、越中第一の要港だったとされます。「朝開き」は、停泊していた船が朝早く出発すること。上3句は「つばらつばらに」を導く序詞。「つばらつばらに」は、つくづく、しみじみの意の語で、望郷の思いをせつなく響かせています。

 

※ 参考文献はこちらに記載しています。⇒『万葉集』について