大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

かくのみにありける君を衣にあらば・・・巻第12-2964~2965

訓読 >>>

2964
かくのみにありける君を衣(きぬ)にあらば下にも着むと我(あ)が思へりける
2965
橡(つるはみ)の袷(あはせ)の衣(ころも)裏にせば我れ強(し)ひめやも君が来まさぬ

 

要旨 >>>

〈2964〉こんなに薄情な人だったのに、もしあの人が着物だったら、じかに着る肌着にしたいとさえ思っていました。

〈2965〉橡の袷の着物を裏返すような態度をとるなら、もう無理に関係を続けましょうか、しません。あなたのいらっしゃらないことよ。

 

鑑賞 >>>

 「寄物陳思(物に寄せて思いを述べた歌)」で、衣に寄せての歌。2964の「かくのみに」は、こんなに薄情な人だったのに、の意。真実のない男に失望し、自分が愚かだったと嘆いている女の歌です。「ける」は、詠嘆。2965の「橡」は、クヌギの木。どんぐりを煮た汁で衣を黒く染めていたのもで、服制では、踐者の服色と定められていました。「袷の衣」は、裏地のついた衣。「強ひめやも」は、強いて関係を続けようか、続けないで、「や」は反語。

 

 

各巻の概要