大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

うつつにも今も見てしか夢のみ・・・巻第12-2880~2882

訓読 >>>

2880
うつつにも今も見てしか夢(いめ)のみに手本(たもと)まき寝(ぬ)と見るは苦しも
[或本の歌の発句には『我妹子を』といふ]

2881
立ちて居(ゐ)てすべのたどきも今はなし妹(いも)に逢はずて月の経(へ)ゆけば
[或本の歌には『君が目見ずて月の経ぬれば』といふ ]

2882
逢はずして恋ひわたるとも忘れめやいや日に異(け)には思ひ増すとも

 

要旨 >>>

〈2880〉現実に今すぐにでも逢いたい。夢の中でばかり手枕を交わして寝ているのはつらい。(愛しいわが妻を)

〈2881〉立ったり座ったりして、どう手を付けていいか今は分からない。あなたに逢わないまま月が替わってしまうので。

〈2882〉逢わないままでいても、恋続けることはあっても忘れるなんてことがありましょうか。日増しに思いがつのることはあっても。

 

鑑賞 >>>

 「正述心緒(ありのままに思いを述べた歌)」。2880の「うつつに」は、現実に。「見てしか」の「てしか」は、願望。2881の「立ちて居て」は、立ったり座ったりして。「すべ」は方法、「たどき」は、手段。2882の「忘れめや」の「や」は、反語。「いや日に異に」は、いよいよ日増しに。