大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

東歌(59)・・・巻第14-3472

訓読 >>>

人妻(ひとづま)とあぜかそを言はむ然(しか)らばか隣(となり)の衣(きぬ)を借りて着なはも

 

要旨 >>>

人妻には何で手出しするなと言うのか。それならば、隣の人の着物を借りて着ることだってあるではないか。

 

鑑賞 >>>

 「あぜか」は、どうして~か。「然らばか」は、それなら~か。「借りて着なはも」は、借りて着なかろうか、着ているではないか。人妻に言い寄った男が、女から人妻だからといって断られたのに対し押し返した歌ととれますが、実際、このような言葉で真面目に人妻を誘うはずもなく、男同士の酒宴のような場で哄笑とともに詠まれた歌と思われます。「然らばか」という、歌の世界にはふさわしくない言葉で、いかにも理屈めいて言っているのが利いています。またこの歌からは、当時は隣の着物を借りることが普通に行われていたことが察せられます。

 

 

「東歌」について