大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

梅の花それとも見えず降る雪の・・・巻第10-2344~2346

訓読 >>>

2344
梅の花それとも見えず降る雪のいちしろけむな間使(まつかひ)遣(や)らば [一に云ふ、降る雪に間使ひ遣らばそれと知らむな]

2345
天霧(あまぎ)らひ降りくる雪の消(け)なめども君に逢はむとながらへわたる

2346
うかねらふ跡見山雪(とみやまゆき)のいちしろく恋ひば妹(いも)が名(な)人知らむかも

 

要旨 >>>

〈2344〉梅の花がどれなのかわからないほど降る雪のように、人目につくだろう、使いの人を送ったら(降る雪の中に使いを送ったら人は知ってしまうだろう)。

〈2345〉空が雲って降ってくる雪のように、命も消え入りそうになりますが、あなたにお逢いするまではと生きながらえております。

〈2346〉跡見山の雪のように、はっきりと目につくほどに恋い焦がれたら、あの子の名が人に知られてしまうのではなかろうか。

 

鑑賞 >>>

 「雪に寄せる」歌。2344の「いちしろけむな」は、人に知られるだろう、明白になるだろう。「間使」は、二人の間を往復する使者。女のもとへ遣いをやるのを躊躇している男の歌です。2345の上2句は「消」を導く序詞。「消なめども」は、消えそうであるが。「ながらへわたる」は、生き続けている。男からひどく疎遠にされている女の歌です。2346の「うかねらふ」は、狩をする時に野獣の姿を窺い狙う意で、その足跡を見ることから「跡見」の枕詞。「跡見山」は、桜井市の鳥見山かといいます。上2句は「いちしろく」を導く序詞。