大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

紫の我が下紐の色に出でず・・・巻第12-2976~2977

訓読 >>>

2976
紫(むらさき)の我(わ)が下紐(したひも)の色に出(い)でず恋ひかも痩(や)せむ逢ふよしをなみ

2977
何ゆゑか思はずあらむ紐(ひも)の緒(を)の心に入りて恋しきものを

 

要旨 >>>

〈2976〉紫染めの私の下紐が外から見えないように、顔色には出さずに恋しているので、やせ細るばかりです。お逢いする手立てがないので。

〈2977〉どうして思わずにいられようか。紐の緒が心にしっかり入り込むように、あの人が恋しくてならないのに。

 

鑑賞 >>>

 「寄物陳思(物に寄せて思いを述べた歌)」で、紐に寄せての歌。2976の上2句は「色に出でず」を導く序詞。「色に出でず」は、表面、顔色に表さず。「恋ひかも」の「かも」は、疑問。「逢ふよしをなみ」は、逢う方法がないので。2977の「思はずあらむ」は、思わずにいられようか。「紐の緒の」は「心」の枕詞。「心に入りて」の表現について、紐を結ぶには、一方の端を輪にして、他方の端をそれに差し入れて結びますが、その輪を心と呼んだことによります。

 

 

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