大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

玉縵懸けぬ時なく恋ふれども・・・巻第12-2992~2994

訓読 >>>

2992
玉たすき懸(か)けねば苦し懸けたれば継(つ)ぎて見まくの欲しき君かも

2993
紫のまだらのかづら花やかに今日(けふ)見し人に後(のち)恋ひむかも

2994
玉縵(たまかづら)懸(か)けぬ時なく恋ふれども何しか妹(いも)に逢ふ時もなき

 

要旨 >>>

〈2992〉声をかけねば苦しくてたまらない。声をかけたらかけたで続けて逢いたくなるあなたです。

〈2993〉紫色にまだらに染めた縵(かずら)のように花やかに、今日見かけたあの人に、後になって恋い焦がれるだろうな。

〈2994〉心に懸けて思わない時はなく恋い焦がれているけれど、どうしてあの子に逢う時もないのだろうか。

 

鑑賞 >>>

 「寄物陳思(物に寄せて思いを述べた歌)」。2992は、たすきに寄せての歌。「玉たすき」の「玉」は美称で、意味で「懸く」に掛かる枕詞。「懸けねば」「懸けたれば」はそれぞれ、心に懸けなければ、心に懸けて思えば、と解するものもあります。「見まく」は「見む」のク語法で名詞形。2993・2994は、かづらに寄せての歌。「かづら」は、蔓性植物で作った髪飾りとされます。2993の「紫」は、ここでは初め色のこと。上2句は「花やかに」を導く序詞。2994の「玉縵」の「玉」は美称で、「懸く」の枕詞。「懸く」は、心に懸ける。「いかにか」は、どうしてであろうか。

 

 

 

万葉集』クイズ

次の歌の作者は誰?

  1. 秋の野のみ草刈り葺き宿れりし宇治の宮処の仮廬し思ほゆ
  2. 香具山と耳梨山と会ひしとき立ちて見に来し印南国原
  3. 阿騎の野に宿る旅人うちなびき寐も寝らめやも古おもふに
  4. 采女の袖吹きかへす明日香風都を遠みいたづらに吹く
  5. いづくにか船泊すらむ安礼の埼漕ぎたみ行きし棚無し小舟
  6. 霰打つ安良礼松原住吉の弟日娘と見れど飽かぬかも
  7. み吉野の山の下風の寒けくにはたや今夜も我が独り寝む
  8. 水鳥の鴨の羽色の春山のおほつかなくも思ほゆるかも
  9. みさご居る磯廻に生ふるなのりその名は告らしてよ親は知るとも
  10. 磐代の浜松が枝を引き結びま幸くあらばまた還り見む

 

【解答】

1.額田王 2.中大兄皇子 3.柿本人麻呂 4.志貴皇子 5.高市黒人 6.長皇子 7.文武天皇 8.笠郎女 9.山部赤人 10.有馬皇子

『万葉集』掲載歌の索引

各巻の概要