訓読 >>>
1930
梓弓(あづさゆみ)引津(ひきつ)の辺(へ)なる莫告藻(なのりそ)の花咲くまでに逢はぬ君かも
1931
川の上(うへ)のいつ藻(も)の花のいつもいつも来(き)ませ我(わ)が背子(せこ)時じけめやも
要旨 >>>
〈1930〉引津のほとりのなのりその花が咲くまで、あなたは逢ってくれないのですね。
〈1931〉川のほとりのいつ藻の花のように、いつもいつも来てください、あなた。私に都合が悪いなどということがあるものですか。
鑑賞 >>>
問答歌(問いかけの歌とそれに答える歌によって構成される唱和形式の歌)。1930は男の歌、1931はそれに答えた女の歌。1930の「梓弓」は「引き」の枕詞。「引津」は、福岡県糸島市の海岸。「莫告藻」は、海藻のホンダワラ。花の咲かない藻であるのに「花咲くまでに」と言っているのは、永久にないことを意味しており、女が避けて逢わないのを恨んでいます。この歌は、巻第7-1279の『人麻呂歌集』にある「梓弓引津の辺なるなのりその花 摘むまでに逢はずあらめやもなのりその花」の旋頭歌を短歌に詠みかえたものとみられ、また1931は、巻第4-491の歌と同じです。古歌の詠みかえまたは古歌そのままを引用しているのは、かけ合いの謡い物となっていたのかもしれません。1931の「時じけ」は、その時期ではない。「やも」は、反語。
『万葉集』クイズ
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【解答】
1.雄略天皇 2.大伴家持 3.大伴坂上郎女 4.萩 5.第5巻 6.山上憶良 7.ホトトギス 8.大伴坂上大嬢 9.大伴書持 10.高橋虫麻呂
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