大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

東歌(61)・・・巻第14-3441

訓読 >>>

ま遠くの雲居(くもゐ)に見ゆる妹(いも)が家(へ)にいつか至らむ歩め我(あ)が駒(こま)

 

要旨 >>>

はるか遠くの雲の彼方にあの娘(こ)の家が見える。早くたどり着きたいと思う。さあ、しっかり歩め、わが馬よ。

 

鑑賞 >>>

 「ま遠く」の「ま」は接頭語。「雲居」は、雲のあるところ、すなわち空。「いつか至らむ」は、いつになったら着くだろうかで、早く着きたいの意。なお、左注に『柿本人麻呂歌集』に曰く「遠くして」、また曰く「歩め黒駒」とありますが、その歌は巻第7-1271の「遠くありて雲居に見ゆる妹が家に早く至らむ歩め黒駒」であり、注に部分的な誤りがあります。いずれにせよ、『柿本人麻呂歌集』が東国の歌も収めているということなのか、あるいは同歌集の歌が東国にまで流布していたのかは分かりません。

 なお、東歌には、馬を詠んだ歌が15首あり、うち8首は馬に乗って出歩く歌です。この時代、高価な馬を飼育して乗り回すことができたのは、一握りの豪族層、最低でも下級官人クラスであっただろうとみられています。

 

 

 

万葉集』クイズ

次の歌の作者は誰?

  1. 降る雪の白髪までに大君に仕へまつれば貴くもあるか
  2. 吾背子と二人見ませば幾許かこの降る雪の嬉しからまし
  3. この花の一よのうちに百種の言そ隠れる凡ろかにすな
  4. うち霧らし雪は降りつつしかすがに吾家の園に鶯鳴くも
  5. 春の野にすみれ採みにと来しわれぞ野をなつかしみ一夜寝にける
  6. 石ばしる垂水の上のさ蕨の萌え出づる春になりにけるかも
  7. わが園に梅の花散るひさかたの天より雪の流れ来るかも
  8. 青山を横ぎる雲のいちしろく我れと笑まして人に知らゆな
  9. 家にあらば妹が手まかむ草枕旅に臥やせるこの旅人あはれ
  10. 陸奥の真野の草原遠けども面影にして見ゆといふものを

 

【解答】

1.橘諸兄 2.光明皇后 3.藤原広嗣 4.大伴家持 5.山部赤人 6.志貴皇子 7.大伴旅人 8.大伴坂上郎女 9.聖徳太子 10.笠郎女

『万葉集』掲載歌の索引

「東歌」について