大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

斑鳩の因可の池の宜しくも・・・巻第12-3020

訓読 >>>

斑鳩(いかるが)の因可(よるか)の池の宣(よろ)しくも君を言はねば思ひぞ我がする

 

要旨 >>>

斑鳩(いかるが)の因可(よるか)の池の名前のように「よろしい人、好ましい人だ」と誰もあなたのことを言わないので、物思いを私はすることです。

 

鑑賞 >>>

 「寄物陳思(物に寄せて思いを述べた歌)」で、池に寄せての歌。「斑鳩」は、奈良県生駒郡の南部。法隆寺ほか聖徳太子ゆかりの古刹の多い地ですが、『万葉集』にその地名が歌われるのはこの1首のみです。地名の由来ははっきりしませんが、昔この地方に多くいた斑鳩(まだらばと:一般にはイカルと呼ばれ、雀と鳩の中間くらいの大きさ))に因むといわれます。「因可の池」は所在未詳ながら、法隆寺の一般公開されていない境内の一角に、昔から「因可の池」と語り継がれてきた場所があるといいます。上2句が「宜し」を導く序詞。「思ひぞ我がする」は、物思いを我はすることである。夫である男が、ほかに女を持っていると聞いて、気を揉んでいる女の歌のようです。

 

 

※ 参考文献はこちらに記載しています。⇒『万葉集』について

『万葉集』掲載歌の索引