訓読 >>>
信濃(しなの)なる須我(すが)の荒野(あらの)にほととぎす鳴く声聞けは時(とき)過ぎにけり
要旨 >>>
信濃の須我の寂しい野原で、ホトトギスの鳴く声が聞こえる。時はずいぶん過ぎ去っていったのだな。
鑑賞 >>>
信濃の国(長野県)の歌。国府はもと上田市にありましたが、のちに松本市に移りました。「信濃なる」は、信濃にある。「須我」は、上田市菅平あたりとされます。東歌の中で、風雅の鳥とされるホトトギスを詠んでいるのはこの1首のみで、また「時過ぎにけり」と旅の時間の経過を言っているところから、国司など都人の歌ではないかともいわれます。ただ、この時が過ぎたとはどんな時が過ぎたのか、について諸説あり、京に帰るべき時や、ホトトギスがやって来て農作業を始める時、人と会う約束をしていてその時、などと説明されます。また、「時過ぎにけり」は、ホトトギスの声を「トキスギニケリ」と聞きなしたものと捉える説もあります。
『万葉集』に詠まれた鳥
1位 霍公鳥(ほととぎす) 153首
2位 雁(かり) 66首
3位 鶯(うぐいす) 51首
4位 鶴(つる:歌語としては「たづ」) 45首
5位 鴨(かも) 29首
6位 千鳥(ちどり) 22首
7位 鶏(にわとり)・庭つ鳥 16首
8位 鵜(う) 12首