大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

妹を見ず越の国辺に年経れば・・・巻第19-4173、4213

訓読 >>>

4173
妹(いも)を見ず越(こし)の国辺(くにへ)に年(とし)経(ふ)れば我(あ)が心どの和(な)ぐる日もなし

4213
東風(あゆ)をいたみ奈呉(なご)の浦廻(うらみ)に寄する波いや千重(ちへ)しきに恋ひわたるかも

 

要旨 >>>

妹(いもうと)のあなたを見ることもなく越の国辺で何年も経たので、わが心の穏やかでいられる日とてもない。

 

鑑賞 >>>

 大伴家持の歌。題詞に「京なる丹比家(たぢひけ)に贈れる歌」とあり、丹比は「多治比」とも書き、皇族系の名家であり、家持の妹が居住していた あるいは嫁いだ家とされます。従って、歌にある「妹」は、兄妹の関係にある妹を指しており、その妹に宛てた歌です。4173の「越の国辺」は、越前・越中・越後の総称。「心ど」は、心のはたらき、精神。「和ぐる日」は、穏やかになる日。4213の「奈呉」は、射水市放生津潟の海浜。上3句は「いや千重しきに」を導く序詞。「いや千重しきに」は、いよいよ幾重にも重ねて。

 この妹との歌のやり取りは、4197~4198にも見られます。

 

 

 

『万葉集』掲載歌の索引

大伴家持の歌(索引)