大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

我妹子を早見浜風・・・巻第1-73

訓読 >>>

我妹子(わぎもこ)を早見(はやみ)浜風(はまかぜ)大和なる我まつ椿(つばき)吹かざるなゆめ

 

要旨 >>>

早く愛しい妻に逢いたいと、浜に吹く早風よ、大和で私を待つ松や椿に、この思いを伝えてくれないなんてことがないように。

 

鑑賞 >>>

 長皇子(ながのみこ)が、文武天皇の難波行幸に従駕した時の歌。「早見」は、地名(住吉あたりか)または形容詞の連体形「早み」。妻を早く見たい意との掛詞になっています。「大和なる」は、大和にある。「まつ」は「松」と「待つ」の掛詞になっています。「吹かざるなゆめ」の「な」は禁止、「ゆめ」は、決して。『万葉集』にはこのように、旅先にあって家の妻を思う歌が数多くみられますが、妻との心のつながりを歌うことによって、旅先での厄災から身を守ろうとする意図が込められているとされます。

 長皇子天武天皇の第4皇子で、母は天智天皇の娘の大江皇女。また弓削皇子の異母兄にあたります。『万葉集』には5首の歌が載っています。子女には栗栖王・長田王・智努王・邑知王・智努女王・広瀬女王らがおり、また『小倉百人一首』の歌人文屋康秀とその子の文屋朝康は、それぞれ5代、6代目の子孫にあたります。

 

 

 

天武天皇の子女

皇子
高市皇子草壁皇子大津皇子忍壁皇子/穂積皇子/舎人皇子/長皇子/弓削皇子/新田部 皇子(生年未詳)/磯城皇子(生没年未詳)

皇女
十市皇女/大伯皇女/但馬皇女/田形皇女/託基皇女/泊瀬部皇女(生年未詳)/紀皇女(生没年未詳)

各巻の概要