大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

さざれ波礒越道なる・・・巻第3-314

訓読 >>>

さざれ波(なみ)礒(いそ)越道(こしぢ)なる能登瀬川(のとせがは)音の清(さや)けさ激(たぎ)つ瀬ごとに

 

要旨 >>>

小さい波が磯を越すという、越への道の能登瀬川、その川の音の清々しいことよ、流れの激しい瀬ごとに。

 

鑑賞 >>>

 波多朝臣小足(はたのあそみおたり:伝未詳)の歌。『万葉集』にはこの1首のみ。何らかの事情で越へ行く途中、能登瀬川の流れの音に聞き入って詠んだ歌とされます。「さざれ波」は、小さな波。「さざれ波磯」は、さざれ波が磯を越す意と地名の「越(こし)」とを掛詞にした序詞。「磯」は、石の多い海岸のことですが、この時代には、池、川などにも言いました。「越道なる」の「なる」は「~にある」で、越の国へ行く道にある。「能登瀬川」は、琵琶湖に流入する滋賀県米原市能登瀬の天野川か。「激つ」は、激しく流れる。

 

 

※ 参考文献はこちらに記載しています。⇒『万葉集』について

『万葉集』掲載歌の索引