大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

風高く辺には吹けども妹がため・・・巻第4-782

訓読 >>>

風高く辺(へ)には吹けども妹(いも)がため袖(そで)さへ濡(ぬ)れて刈れる玉藻(たまも)ぞ

 

要旨 >>>

風が激しく海辺に吹いていましたが、あなたに贈るために、着物の袖まで濡らして刈り取った藻ですよ。

 

鑑賞 >>>

 紀女郎が、玉藻に包んだみやげ物を女友達に贈った歌で、みやげ物の中身は伏せられています。「風高く」は、漢詩文の「風高」に拠る表現で、風が激しい意。「辺」は、海岸。「玉藻」の「玉」は、美称。人に物を贈る時には、苦労して手に入れた物だと言う、上代の習わしに従っています。また、贈り物の中身ではなく、それを包む藻のことだけを詠んでいるところに、郎女の気働きと機智があり、包みにさえも価値を付加して期待を抱かせ、友を喜ばせようとしているのでしょう。贈り物中身は、真珠だったのでしょうか。

 

 

『万葉集』掲載歌の索引

各巻の概要