訓読 >>>
わが背子(せこ)を大和(やまと)へ遣(や)りてまつしだす足柄山(あしがらやま)の杉の木(こ)の間(ま)か
要旨 >>>
愛する人を大和の国へ行かせてしまい、その無事の帰りを私が立って待っている足柄山の杉木立よ。
鑑賞 >>>
相模の国(神奈川県)の歌。「遣りて」は、行かせて。大和に出向いたのは、調・庸の運搬、または成人男子に課される衛士や仕丁などの力役負担のための出張だったと見られます。「まつしだす」は難解で、上掲の解釈のほか、旅立った夫の無事を祈るための、松を立てるという呪法とする説もあります(「し」は強意、「だす」は「立つ」の東語と見る)。「足柄山」は、具体的な一つの山の名前ではなく、神奈川県と静岡県の県境にある足柄峠を中心に、古くは金時山(標高1213m)を含めた連山の総称。