大和の国のこころ、万葉のこころ

不肖私がこよなく愛する『万葉集』の鑑賞blogです。

我が背子に恋ふとにしあらし・・・巻第12-2942~2943

訓読 >>>

2942
我(わ)が背子(せこ)に恋ふとにしあらしみどり子の夜泣きをしつつ寐(い)ねかてなくは

2943
我(わ)が命(いのち)し長く欲(ほ)しけく偽(いつは)りをよくする人を捕(とら)ふばかりを

 

要旨 >>>

〈2942〉あの人に心底恋い焦がれているらしい。まるで赤子のように夜泣きして寝られないのは。

〈2943〉私の命は長くあって欲しい。嘘をついてだましたあの男をいつか掴まえて懲らしめるために。

 

鑑賞 >>>

 「正述心緒(ありのままに思いを述べた歌)」。2942の「恋ふとにし」の「し」は、強意の副助詞。「あらし」は「あるらし」の転で、「らし」は、根拠に基づく推定。「みどり子」は、3歳くらいまでの子供、赤子。「寐ねかてなくは」の「かてなく」は「かてぬ」の名詞形で、~できない、~しにくい。なお上掲の解釈とは別に、子を抱える妻の、その父である夫に贈った歌であるとし、子が夜泣きをして寝られずにいるのは、きっとあなたを恋しがっているのでしょうと、足遠くなった夫の来訪を求めているものとの解釈があります。

 2943の「欲しけく」は、形容詞「欲し」の名詞形。「偽りをよくする人」は、嘘を上手に言う人。「捕ふばかりを」は、上掲の解釈とは別に、捕えて放さないようにしたいとするものもあります。「を」は、感動の助詞。

 

 

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